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2011年10月10日 (月)

大学病院は良い病院か?

身近な開業医より大学病院の方がより良い医療サービスを受けられる、と思っていませんか?

私も以前はなんとなくそんな気がしていました。でも、これって本当でしょうか。もちろんそう思うからこそ、多くの人がただの風邪で大学病院の内科を訪れ、水虫で大学病院の皮膚科を受診したりするのでしょう。以前このブログで紹介した野田一成さんの本(「医者の言い分」(中経出版))には、内情を知る医師の立場から「患者のこの心理は不思議だ。」と書かれています。

冷静に考えてみれば、早朝から大混雑の大学病院の外来で昼過ぎまで待つより、近所の内科で診てもらった方が楽です。また、診察時間も余裕のある開業医の方が、世間話などしながら丁寧に診てくれるでしょう。さらに、大学病院には去年まで研修医だった新米の医師が多く、この道何十年のベテラン開業医と同レベルの診察は望めないでしょう。しかも、結果として同じ薬を処方してもらうのであれば、どう考えても大学病院は損です。

以前、静岡県西部の某市役所のコンサルティングを行っていた際に、市民病院の事務部長さんから、「なぜか市民はうち(市民病院)より、浜松医大病院の方がいいと思っているんだよね。」という話を聞きました。実は、市民病院の先生のほとんどが浜松医大から派遣されているので、結局は同じ先生に診てもらうことになるのですが、それでも「医大の方が設備が整っているから良い」という大学病院信仰があるようなのです。

子供のころ見たTVドラマで、金持ちの息子が大怪我をして小さな病院で応急手術を受けた翌日、両親が言いにくそうな表情で担当医師に向かって、「設備の整った大学病院に移したいのですが・・・」と切り出したところ、その医師は「患者に必要なのは良い設備ではありません。必要なのは良い医師です。大学病院だったら、息子さんの足は切断されていたでしょう。」ときっぱりと告げており、子供ながらとてもかっこいいと思った記憶があります。

余談ですが、この患者の側からの損得の話よりも深刻なのは、このような患者側の勘違いが大学病院に無用の負担をかけ、本当に高度な医療を必要としている重病患者に割ける診察時間がどんどん失われていることの方です。救急車をタクシー代わりに使う人が増えているそうですが、なんとなく通じる話ですね。

さてさて、講師業ではどうでしょうか。

セミナー講師を頼むには、有名なコンサルティングファームに依頼することもできますが、小規模な教育会社や私のような個人コンサルタントに依頼することもできます。皆さんだったらどちらを選びますか?

大規模ファームも個人コンサルタントも、双方に利害得失があり一概にどちらが良いとはいえませんが、意外かもしれませんが、世界的な大企業であっても、私のような個人コンサルタントを重用してくださる企業が結構多いのです。結局のところセミナー講師やコンサルタントはサービス業ですので、「どこに頼むか」より「誰が担当してくれるのか」の方が重要であり、すぐれた発注者はそのことを十分に理解されているのです。

ところで医療の世界では、「設備が整っているから」という理由で大学病院が選ばれますが、講師やコンサルタントの世界では、「高度なノウハウや豊富な情報を保有するから」という理由で大規模ファームが選ばれることがあります。しかし、このような期待は多くの場合、あっさりと裏切られることが多いのです。

私も大規模ファームに所属したことがあるから分かりますが、ノウハウなるものの多くは「お飾り」であることが多いのです。宣伝用パンフレットをきれいに飾ってはくれますが、実務で役立つことはほとんどありません。というより、ノウハウとして定式化できるような知識は、ベテランコンサルタントであれば常識として身につけているものがほとんどで、強いて言えば経験の浅いコンサルタントに大きな失敗をさせないための子供用自転車の補助輪のようなものです。これの有無で仕事の質が変わることはまずありません。

「大規模ファームは豊富な情報をもっている」という話も同様で、確かに世界規模でサービスを提供しているファームでは、イントラネットで「○○に関する実績はないか?」と問いかければ、地球の裏側から「こんなのがありますよ」と資料を送ってくれることがあります。しかし、現実には参考資料以上の価値はないのです。考えてみれば当然ですが、自分がサービスを提供するクライアントはそれぞれ固有かつ厄介な課題を抱えており、それに対してどのようなソリューションを提供するかということが問われているのであり、事情の異なる実績情報がそのまま役立つことはないといって良いでしょう。

以上はどちらかというとコンサルティング業務よりの話ですが、講師業務の場合はさらにこの傾向が強くなります。所詮講義の技術は噺家の話芸のような部分が多く、それは一身専属のものです。一流のファームに所属しているというのは、芸人でいえば吉本興業に所属しているというようなことで、肝心なのは誰が芸をやってくれるのか、ということであるのと似ています。

大規模ファームに依頼すると、そのとき手が空いている人(暇な人)に仕事が回ることが多く、ハズレくじをひかされることも多いことをご存知のベテラン人事担当者の方などは、確実にお目当ての講師に来てもらえる小規模ファームの方が安心できることを評価してくださっているのでしょう。

誤解のないように、大規模ファームはダメだということが言いたいのではありませんよ。それぞれに利害得失があり、一概に大規模だから良いというものではないですよね、ということが言いたいのです。大規模ファームの良いところは、有名なので探す手間が省けることや、社内稟議が楽に通ることです。さらに、結果が良くなかった場合でも、「世界的に有名な○○社に依頼したけどダメでした。」という言い訳が通り易いことも魅力です。
(すみません、少し冗談が過ぎました。)

いずれにしても、サービス業は「人」だ、ということなのですね。

すみぶち塾Sumizuku_2


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