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2011年10月24日 (月)

外科と内科、どっちが偉い?

このところ、このブログではお医者さんの話が続いています。今回で一段落としましょう。

長年、いろんな職場を訪問し、さまざまな職種の方とお話していると、専門家の間では、いわゆる近親憎悪が結構多いようですね。公認会計士は税理士と仲が悪いし、SEはコンサルタントと仲が悪い。陸軍は海軍と仲が悪いし、保健所は福祉事務所と仲が悪い。営業課長は宣伝課長と仲が悪いし、社長は専務と仲が悪い。最後のは冗談です!

長い間、お互いに縄張り争いとか責任のなすりあいとかやってるうちに、だんだんと「顔を見るのもイヤ!」という感じになるのでしょうね。それとは別に、そもそも「どっちが上か」という意味でのいがみ合いもありますね。

ずいぶん前の話ですが、医者の世界では、人間の体を総合的に診察することができる内科医が一番えらい、という話を聞いた事があります。もっとも最近では、内科も循環器内科、消化器内科、神経内科など、さまざまな「分派」に分かれており、「総合的」という看板にはやや疑問が残るのですが。

それに対して外科医の先生方も負けてはいないようです。ある大学病院の外科の先生は、「内科は診たてたあとは患者に薬を飲ませ、治ることを天に祈るだけだ。それに対して外科医は執刀ができる。患部を摘出したり、傷口を縫合して血をとめることだってできる。つまり患者を治せるのは外科医だけなのだ。」と豪語されたようです。失礼ながら言わせていただければ、縫った傷口が元に戻るかどうかは、外科医とてやはり天に祈るしかないと思うのですが。

まあ、細かい話はともかく、それぞれに言い分はあるということです。どうか仲良くやっていただきたいものです。

我々の世界にも似た話がありまして、コンサルタントとセミナー講師はどっちが偉いか、というものです。土地勘のない方には「何の話だ?」という感じだと思いますので、少々解説を。

企業が経営改善を実行する際、自力では無理だと判断された場合にコンサルタントを雇うことがあります。コンサルタントに依頼して改善を進めることを、「コンサルティングを受ける」といいますね。彼らに現状分析をしてもらい、「あるべき姿」を描いたうえで、さまざまな制度を構築したり、情報システムを導入したり、業務手続きの改善を行っていきます。これが一般にイメージされるコンサルティングという仕事だと思います。

ところがこれとは異なるアプローチのコンサルティングもあります。上のケースでは社内の制度や業務プロセスなどに課題を抱えるクライアントを想定していますが、クライアントの抱える課題はそれだけではありません。「問題意識が低い」「組織間のコミュニケーションが希薄だ」といった社員の意識や能力が原因でやっかいな問題を引き起こしているケースもあります。このようなケースでは、制度や手続きをいじっても問題は解決しないことが多いのです。このようなケースでは、教育型のアプローチが採用されます。部長、課長、係長などの経営階層ごとに、彼らに求められる能力や大切にしてもらいたい価値観などを教育していき、「できる」という自信や、「やらねば」という意識を植え付けていくのです。

前者をハードアプローチ、後者をソフトアプローチと呼ぶこともあります。前者を専門とするのがコンサルタント、後者の専門家はセミナー講師ということになります。

たとえば、「これまで、社員のやる気をそぐマネジメントが行われてきて、士気が極度に低下してしている」という事実に経営者が気づいた場合、ハードアプローチでは「評価制度の再構築」「賃金体系の見直し」「業務機能の再配分による業務負荷の平準化」など、問題があると思われる制度や仕事そのものをいじっていきます。

それに対してソフトアプローチでは、上司と部下のコミュニケーションの質を改善するための傾聴・自己表現スキルの向上や、職制を通じて経営課題の展開を可能にし、各自に期待される役割を深く理解し、お互いの役割を相互に認識できる環境を作り、風通しの良い職場を実現して行くような取り組みを行います。この場合に活用されるのが研修(セミナー)です。セミナーといっても、単なる知識伝達ではなく、現実の職場の課題を取り上げて、その解決方法を議論したり、上手なコミュニケーションのあり方を擬似体験したりといった多様な技法が駆使され、受講者自らが問題解決策に気づくことを重視します。

このように、大別して2通りのアプローチがあるのですが、しいて言えばソフトアプローチは内科、ハードアプローチは外科と言えるでしょうか。もうお分かりでしょうが、コンサルタントとセミナー講師の間で、冒頭に紹介した内科と外科の言い争いのような喧々諤々の論争があるのです。

医療のためには内科医も外科医も必要で、患者は各診療科がそれぞれの役割をきちんと果たしてくれることを期待します。悪性の腫瘍があれば早期に摘出手術が必要で、薬を飲んで気長にかまえている場合ではありません。しかし、なんでも切ってしまえば解決するわけではなく、心身症などの場合には投薬と心理療法などを効果的に組み合わせて治癒を目指すと思います。

経営改善でも同じです。評価への不満を解決する際に、役割基準が不明確で評価尺度も定められていない組織であれば、まずしっかりした仕組みを整備すべきです。この状態で意識改革など期待できるものではありません。しかし、仕組みを作ってそこに人を追い込めば組織は動くというのは暴論です。あるいは楽観的すぎます。その仕組みの意図を正しく理解させ納得させた上で、適切に運用するスキルを組織に注入する必要があります。ハードとソフト、どちらが重要だというものではないのです。

私は若いころ、コンサルタントにあこがれてこの世界に入りました。そして企業の制度や組織をいじって、いかにも「コンサルタントでございます」というつもりでおりました。そしてセミナー講師のことを「あいつらは、しゃべるだけで何も変えられない」「経営改善(経営改革)ができるのは我々コンサルタントなのだ」と身の程知らずにも豪語しておりました。

しかし今は理解できます。コンサルタントもセミナー講師もどちらもなければ経営改善(経営改革)の成功はあり得ないことを。

視野を少し広げるにも、それなりに時間がかかるものですね。

すみぶち塾Sumizuku

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