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2011年6月

2011年6月 6日 (月)

無理は承知で

みなさんはゼロ戦をご存知でしょうか。私くらいか、それより上の年齢の方にはおなじみの、帝国海軍の戦闘機です。ゼロまたはジークと呼ばれ、米軍にも恐れられた名戦闘機です。なんでも、かつての米国の辞書に、「彼女を落とすのは、ジークを落とすより難しい」という文例が載っていたとか。

柳田邦男の「零式戦闘機(文春文庫)」には、ゼロ戦の開発をめぐる壮絶な物語が載っています。ゼロ戦の開発ネームは「十二試艦戦(艦上戦闘機)」といいます。昭和12年に海軍が三菱航空機と中島飛行機(今の富士重工)」に競争試作を命じたことによるのですが、制式採用は昭和15年です。この年は皇紀2600年(神武天皇を起源とする年号)にあたることから、最後のゼロをとって零式戦闘機(零戦、ゼロ戦)と呼ばれます。

当時の日本の航空技術は欧米に大きく後れをとり、対米戦争を戦うには、優れた航空機の開発が急務でした。後に連合艦隊司令長官として有名になった山本五十六少将(当時、航空本部技術部長)が陣頭指揮し、国を挙げて急ピッチで技術向上に邁進していた時期です。

ゼロ戦の開発責任者は堀越二郎氏といい、当時まだ30歳そこそこの若手技師でした。日に日に歩み寄る戦雲に焦りを覚える海軍は、開発の要求仕様にそれこそ無謀ともいえる無茶な要件を書き連ねました。分かりやすく書き直せば、スピードで世界最高、旋回性能で世界最高、攻撃力で世界最高、航続距離で世界最高、といった具合です。「好き勝手に、書けるだけ書いた」といった印象です。要は不可能を可能にせよということです。当時、すでにいくつもの画期的な戦闘機の開発に成功してきた堀越技師も、「これは無理だ」と、何度も根をあげそうになったそうです。海軍側に、この中のいくつかを緩めてもらえないか、と交渉したのですが、「ダメ!」の一言だったそうです。競合先の中島飛行機は早々にリタイヤしてしまい、海軍の望みは三菱にかかっていました。

堀越技師のすごいところは、絶対に逃げない、そして妥協しない精神です。航空後進国の日本で前例のない開発であれば、欧米からノウハウを買ってきて、それを下敷きに開発すれば楽です。しかし、それでは欧米並みにはなれても、欧米を超えることは不可能です。航空の自立を目指す海軍の期待に沿うために、何としても独自技術を開発するという意気込みで、最後まで考えに考え抜いた点です。そしてとうとう、当時の世界水準を大きく引き離す、最高の戦闘機を生み出したのです。

その苦労の中に次のような話があります。当時の日本には高性能のエンジンがなかったのですが、ひ弱なエンジンを前提に高性能を引き出すには、徹底的な軽量化を目指すしかありません。開発チームのメンバーの回想によれば、堀越さんは絶対に妥協しなかったといいます。削りに削った図面をもって承認に伺うと、「ここはもっと削れるはずだ」と何度もやり直しを求められたそうです。結果として、普通に設計した場合より、何割も軽い機体が実現できたそうです。「とことんこだわる」ということは大切ですね。

講師をやっていても似た経験をすることがあります。たとえば新任管理職研修の例です。

「まずはマネジメントの基本を押さえたいですね。とくにリーダーシップと問題解決、そして人事評価の基本スキルは必須です。それに最近の職場環境を考えて、部下とのコミュニケーション能力にも触れていただきたいと思います。傾聴のスキルが重要ですが、自己表現のスキルも外さないでください。できれば実習を入れてほしいと思います。新任管理職ですから、労務管理の基本は重要ですね。最近の事件などをもとに、法令に関する知識の重要性を認識させていただきたいと思います。それからできれば加えていただきたいのですが、計数感覚が重要になってきているので、財務諸表の基礎的な読み方をどこかに入れられませんかね。簡単なものでいいんです。」そして、最後は「これからのマネジメントに向けた意気込みを確認するために、管理職としての自己啓発計画を自分なりに立てさせて研修を終えてください。以上の内容で、1日7時間のプログラムとしてご提案いただけますか。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、ん? ・・・・・・・、はい(汗)。

ここで出来合いの教材を間引きしながら組み合わせて、「ご要望の通りに講座を設計しました。」といってもいいのですが、それではタダの詰め込み教育であり、虻蜂取らずの学習効果の期待できない講座になってしまいます。それだと、「後が怖い」です。

どうするか。

「そんなの無理ですよ。」と正直に言って、内容を削ってもらうこともできます。もう一つは、発想の転換ですね。知識学習は事前学習として研修時間中はひたすら考える学習に充てる。事後学習を加えて知識の定着化を図る。いろいろと工夫はできます。でも、工夫すればするほど、新たな教材作成の手間が増えて講師は大変です。

しかし、見事、ご要望に応えて所期の成果が実現できたときは、お客様の信頼もぐっとアップします。

手間を惜しんでいては、いい講座は育ちません。

すみぶち塾Sumizuku

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