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2010年8月 4日 (水)

事例研究はお好きですか?

コンプライアンス研修の講師をやっていて、複雑な感情に襲われるのが事例研究です。実際に起きた不祥事事例を取り上げて、その原因と結果、学ぶべき教訓などを解説するあれです。

研修企画のための打ち合わせをやっていて、クライアント企業の担当者の方から、「理屈は要りませんから、とにかく事例を話してください。」と切実な表情で頼まれることがあります。その心を推測すると、「コンプライアンスとは何ぞや」などという理屈を話してしまうと、面白くないから受講者が寝てしまう。そして後から、「つまんない研修をしやがって」という非難を浴びるのが嫌、というところでしょうか。

確かにこの事例研究、受講者には受けるんですね。題材の選定とストーリー展開を誤らなければ、少々不謹慎ですが、まるでラジオドラマを聴いているように楽しめます。暇つぶしの題材には最適でしょうね。そして、「いい話を伺いました」「教訓になりました」というアンケート結果が待っています。これはこれで、講師としては悪い話ではないのですが、気になるのは研修効果の方。

某TV番組のデータ捏造の話を聞いた受講者は、「なるほど嘘はいけませんな」と言いながらも、「でもうちはTV局じゃなくてよかったね」と思っているかもしれません。ガス器具による一酸化炭素中毒事件の話を聞いた受講者は、「事実を誠実に受けとめる態度は大切だよね」と感じながらも、「でもうちは燃焼装置は扱っていないからよかったね」と胸をなでおろしているのかもしれません。暴言だとお叱りを受けるかもしれませんが、あたらずといえども遠からず、といったところではないでしょうか。

実際、講師の立場からは受講者が何を教訓と考え、どのような学びを得たのかは分かりづらいものです。

事例研究で本当に学ぶべきは、事件を生じさせたメカニズムを理解し、それが自社に作用した場合には何が起きるのか、それを防ぐために今からどのような対策をとるべきなのかという点について、真剣に考えることです。実は、これは非常に難しいことなのです。ときどき事例研究の後、この点について検討する演習を行うことがあるのですが、きちんと「自分のこと」として対策まで検討できる人はまれです。ということは、ほとんどの人は事例からなんら有効な教訓を学んではいないのです。

このような実態を見るにつけ、「はたして事例研究って、意味があるのだろうか?」と疑問を感じます。もちろん、講座の冒頭に1~2の事例を紹介して研修に興味を持ってもらうことは有意義だと思います。しかし、それ以上の意味はあるのでしょうか。あなたも疑問に感じませんか?

そこで最近の私の講座では、事例を紹介したあと、学ぶべき教訓を簡潔に箇条書きで整理し、自分の業務でチェックすべきポイントを確認していただくようにしています。コンプライアンス研修はリスクマネジメント教育の色合いが強い研修です。その意味で、日常の些細な変化を敏感に感じ取り、「おかしいな」と思っていただけるようになることが重要です。チェックポイントを思い出すきっかけとして事例を使うことは意味があると思います。

いずれにせよ、事例研究の取り扱いは十分な配慮が必要ですね。これはコンプライアンス研修に限らないと思います。種々のマネジメント研修でも同じではないでしょうか。

摂氏35度の炎天下で、こんなことを考えました。

すみぶち塾Sumizuku

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